
それアウトです!
態度
ハラスメントを受けている従業員を見て見ぬふり
企業におけるコンプライアンス違反が頻繁に取り沙汰されている。
昨今、何気なく発した一言やしぐさがきっかけで大問題に発展するケースも少なくない。本コラムでは、つい言ってしまいがちなキーワードや態度から、なぜそれが「アウト」なのかを掘り下げよう。
- ハラスメント
- 第三者
- 傍観者
パワハラ、セクハラなどのハラスメントが行われている現場を見て、経営者としてそれを止めた経験はあるだろうか。あるいは、ハラスメントを許さない職場環境を経営者としてつくれているだろうか。
ハラスメント被害者は、自分から意見や抗議の声を上げにくい。ミスがきっかけで叱責された場合は、「言われても仕方がない」と我慢してしまう。セクハラをされても、強く拒否して人間関係がこじれるのを恐れ、諦めてしまう。
一方、大抵の行為者は、自分の言動がハラスメントであるという自覚がない。パワハラは「正当な指導」、セクハラは「コミュニケーションの一つ」と誤って認識しているからだ。見聞きした第三者による何らかのアクションが、ハラスメント行為の防止に一番効果的だ。
第三者がすべき5つの行動
ハラスメントを見かけた人が被害軽減のためにできる5つの行動がある。
- 1)注意をそらす
- 例えば宴会でボディータッチなどのセクハラを見たら、料理や飲み物の注文を聞くなどして他に気を向けさせ、その隙に2人を離す。パワハラ的言動をしている場合は、別の話題を提起する。
- 2)直接介入する
- 2人の間に入って物理的に引き離したり、上司であればその話題はもうやめようと直接伝えたりする。
- 3)第三者に助けを求める
- 先輩やポジションの高い上司に相談して一緒に対応してもらう。
- 4)アフターケアをする
- その場で何もできなかったら「さっきは大丈夫だった?」と被害者を気遣う言葉をかける。
- 5)証拠を残す
- 録音・録画・メモを残しておく。
この5つの行動を従業員に伝えておくことが経営者の役割だ。ハラスメント予防の研修を開き、傍観者にならず、自分ができることを社員同士で話し合っておくと、いざというときにすぐ対応できる。社歴が浅い若手社員ならば3)、4)の行動がしやすい。
パワハラの場合は行為者に対して、一方的に責めないことだ。「どうしたの? 3人で話そうか」と両者の話をきちんと聞く。行為者側も、仕事が忙し過ぎてつい声を荒らげたなど、追い込まれている事情があるかもしれない。両者の感情がこじれていたら、それぞれと面談し、気持ちの整理や目標の再設定を行うなど、職場環境を調整するのが肝心だ。
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稲尾 和泉
クオレ・シー・キューブ 取締役2003年4月からクオレ・シー・キューブにてカウンセラーおよび研修講師。産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント、精研式SCT(文章完成法テスト)修士、日本キャリア・カウンセリング学会会員。共著に『パワーハラスメント』(日本経済新聞出版)など