
それアウトです!
キーワード
さすが、できる人は違うねぇ
企業におけるコンプライアンス違反が頻繁に取り沙汰されている。
昨今、何気なく発した一言やしぐさがきっかけで、大問題に発展するケースも少なくない。本コラムでは、つい言ってしまいがちなキーワードや態度から、なぜそれが「アウト」なのかを掘り下げよう。
- 皮肉
- ノンバーバルコミュニケーション
- ハラスメント
今回のキーワードは「さすが、できる人は違うねぇ」だ。ただ、この言葉に伴うノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)次第で、言われた人の感じ方が全く異なる。
「すごいなあ」と感心したのか、妬みややっかみ交じりの皮肉なのか。言った人の表情、声のトーン、態度、身ぶり手ぶりのノンバーバルコミュニケーションにより、大きく異なる。
伝え方を間違えると、「ばかにされた」「見下された」と感じさせてしまい、こうした発言が重なると人間関係に悪影響を及ぼす。
従業員が皮肉交じりの発言を繰り返し、職場のチームワークを乱す場合は、上司は、「それはさすがに言いすぎじゃない?」などやんわり忠告しよう。当人に皮肉を言っている自覚がないケースは1対1で面談し、言われた人や周囲で聞いている人が感じた印象を伝える。そのような発言の背景には、現状の仕事に対する不安や不満の鬱積が潜んでいるケースもある。発言者を注意する前にしっかりと相手の気持ちや状況を聞いてほしい。
言う側と言われる側をケア
将来、発言者が管理者となったとき、皮肉と受け取られるコミュニケーションパターンが続くと部下を統率できない。人材育成の観点からも、「こういう言い方は、あなたにプラスではないから、改善してほしい」とアドバイスする。
直接注意しづらい場合は、仕事の進捗状況などを確認しつつ、「最近、困っていることはない?」と聞き、相談されたら共に解決策を検討する。抱える問題に対して上司が理解を示し、寄り添う姿勢で対応すれば、当人の心が落ち着き、皮肉な口調が次第に改善につながる。
一方、皮肉を言われた人に対しては、上司として部下の心情や仕事への影響を確認し、「このような状況は改善していく」と伝えよう。
一番良くないのは、「あの人はそういう言い方をする人なんだよ」「仕方がないから、みんなも我慢しているんだ」などと、問題を解決せずうやむやにすることだ。同じ問題を繰り返さないことが、より良い職場風土を作っていく。
皮肉と受け取られるコミュニケーションパターンの積み重ねが、ハラスメントの域に達してしまう。それを防ぐには、普段から社内に目配りし、従業員に声掛けし、問題に気づいたら早めの介入が重要だ。
稲尾 和泉
クオレ・シー・キューブ 取締役2003年4月からクオレ・シー・キューブにてカウンセラーおよび研修講師。産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント、精研式SCT(文章完成法テスト)修士、日本キャリア・カウンセリング学会会員。共著に『パワーハラスメント』(日本経済新聞出版)など