
それアウトです!
キーワード
スカートはいたらかわいいのに
企業におけるコンプライアンス違反が頻繁に取り沙汰されている。
昨今、何気なく発した一言やしぐさがきっかけで大問題に発展するケースも少なくない。本コラムでは、つい言ってしまいがちなキーワードや態度から、なぜそれが「アウト」なのかを掘り下げよう。
- ハラスメント
- 女性従業員
- ジェンダー・バイアス
パンツスタイルの女性従業員に対して、何気なくこんな言葉をかけた経験はないだろうか。制服や作業着のない職場では服装や髪形は、仕事に支障がなく、周囲を不快にせず、ビジネスマナーとして失礼のないものであれば当人の自由だ。
昨今は身体的、精神的に性を男・女に二分するのではなく、「LGBTQ+」の言葉で表すように、性のあり方にはグラデーションがあるという認識が広まっている。心の性と体の性が一致しない状態で人生を送る人もおり、安易にスカート着用を薦めるのは不適切だ。
「髪形変えた? ステキだね」などという言葉も、相手を不快にさせることがある。その言動がハラスメントかどうかは、仕事上で適切なフィードバックや助言などを積み重ねた信頼関係があるかどうかがカギになる。
会社の上層部が普段の業務で関わっていない従業員に、髪形や容姿のことばかり声をかけて、良いコミュニケーションを取っているつもりになっていないだろうか。容姿ばかりを話題にされれば、「外見の良さだけを求められているのか?」と誤解を与えかねない。髪形や容姿の話題は絶対にダメ!というわけではなく、その話題が相手に与える影響に関心を持ち、困った様子が見られたら控えるなどの配慮が求められる。
ドレスコードの話し合いは有効
化粧をしない女性従業員に対して、「化粧をしたほうがいいよ」と言うのも適切ではない。一定の仕事をきちんとこなせる健康状態にあり、職場で不快感を抱かせない身だしなみであれば、化粧をするかどうかは他の人が言及することではない。
顔色が非常に悪く疲れ切って見える場合や、誰もが気になるほど身なりが乱れてきたときは、心身の不調のサインかもしれない。上司は従業員のメンタルケアをする責任もあるので、「体調が良くないように見えるけど、何かあった?」「仕事上の問題はない?」などと声をかけるとよい。
ビジネスマナーとしての服装は、世代や文化の違いで意識の差が大きい。従業員が迷わないためにドレスコードを決める会社も多い。「男性は、夏はノーネクタイでOK。短パンや素足にサンダルはNG」などだ。
ドレスコードはトップダウンでなく、仕事に集中できる環境づくりの一環として、職場内で話し合う機会を設けると効果的だ。整理整頓の話題などと同レベルで自由に話し合うと、多様な世代や環境の人たちの考えを聞ける機会となる。従業員も自分たちの意見が反映されるので、決定事項をスムーズに受け入れられる。
稲尾 和泉
クオレ・シー・キューブ 取締役2003年4月からクオレ・シー・キューブにてカウンセラーおよび研修講師。産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント、精研式SCT(文章完成法テスト)修士、日本キャリア・カウンセリング学会会員。共著に『パワーハラスメント』(日本経済新聞出版)など