トレンドを読み解く今月の数字

ちまたには様々な数字があふれている。それらは時に大きな意味を持つ。
「数字」から世の中の事象を切り取ってみよう。

  • キャッシュレス決済
  • QRコード
  • 電子マネー
更新

42.8

~日本のキャッシュレス決済比率~

Number Of The Month

Font "DSEG" by Keshikan. SIL Open Font License 1.1

2025年3月に、経済産業省は2024年における日本のキャッシュレス決済比率が過去最高の42.8%になったと公表した。金額にすると141兆円だ。その分子の内訳は、クレジットカードが最も多く82.9%、次いでコード決済9.6%、電子マネー4.4%、デビットカード3.1%と続く。国は2018年に経済成長戦略の一環としてキャッシュレス決済の普及に着手し、2025年6月までにその比率を約4割にする目標を掲げた(※1)。それが前倒しで達成されたことになる。

推進する理由としては、労働者人口減少における生産性の向上や、不透明な現金流通抑止による税収向上が挙げられる。もともと日本はATMが普及し利便性が高く、レジ対応も迅速かつ正確で現金支払いが根強かった。かつて「現金大国」と呼ばれたほどだ。しかしコロナ禍での非接触会計の推奨や、決済方法の多様化が後押しする形となってキャッシュレス化が急速に広まった。

キャッシュレス決済の種類には、クレジットカードやコード決済、プリペイド式電子マネーなどがある。近年急速に台頭しているのが、QRコードやバーコードによる決済だ。物販の購入や外食産業での利用が、若年層を核に幅広い年齢層に広がりつつある。とりわけ29歳以下では「よく利用している」が約5割、「ときどき利用」と合わせると8割近くになるデータもある。

小売業では7割強が
キャッシュレス決済を導入

昨今、キャッシュレス化の波は行政機関にも及ぶ。納付書バーコードによる公金収納や、印鑑証明の写しなどの発行手数料の支払いが可能だ。医療分野でも2023年に厚生労働省が通達した事務連絡(※2)により、キャッシュレス化に向けた動きが活発化している。

キャッシュレス決済は支払いがスムーズでポイント還元があるなど、消費者にはメリットが大きい。一方、サービスを提供する企業や店舗側にとっては状況が異なる。決済端末の導入にかかる初期費用、毎月発生する手数料などの負担は大きく、小規模事業者は導入を控えがちだ。ただ、2022年に発表された経済産業省のまとめでは、中小企業全体では59.0%、小売業では71.3%が何らかのキャッシュレス決済手段を導入済みという数字もある(※3)

国は今後も政策としてキャッシュレス決済を推進する方針だ。将来的にはその比率を世界最高水準の80%と設定している。企業や店舗にとってキャッシュレス決済の採用は、レジ業務の効率化や客単価の増加、現金取り扱いによる会計ミス軽減につながるメリットがある。ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)で支払いができることは、増え続けるインバウンド対応にも有効となりそうだ。キャッシュレス化が加速する今、機会損失を防ぐためにも導入を検討する時期に来ているのかもしれない。

  • ※1キャッシュレス・ビジョン 経済産業省 平成30年4月
  • ※2医療機関等における一部負担金のキャッシュレス支払いについての事務連絡 厚生労働省保険局医療課 令和5年9月
  • ※3キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会 経済産業省 令和4年3月